社会の発展に寄与する目的をもって行われていますが、一部の研修生・技能実習生が研修・技能実習中に失踪する事例が発生
していることは大変残念なことです。
残念ながら毎年、研修生600~800人、技能実習生1,200~1,500人が失踪している現実があり、これは受入れ機関にとって
も行政にとっても実に頭の痛い問題といえますし、あってはならないことです。
これらの失踪者の法的地位は? 刑事罰は? 帰国の方法は? 答えは個々のケースによって異なってきます。
圧倒的に多いのが在留期限を経過してしまったケースです。入管局の調査部門が、その失踪者の身柄を発見して退去強制手
続きを執り、本国に強制送還された場合、帰国旅費は本人の自費による場合がほとんどです。こうして送還されたものは、ブ
ラックリストに登載されて、その後5年間は日本に来ることができません。さらにそのものがブローカーであったり、偽造文
書を行使していたなどの悪質なケースや入管法違反以外の余罪が認められた場合には、入管が警察または検察に告発し刑事処
分を求めることもあります。
失踪者の多くは在留期限を経過しても軽い気持ちでそのまま我が国に留まるようですが、この在留期限を経過して留まるこ
と(オーバーステイ)は「不法残留」と呼ばれ、3年以下の懲役か禁固のどちらか、あるいは300万円以下の罰金という罰
則が設けられている重大な犯罪なのです。しかも我が国にいる限りは、犯罪行為が継続しているため、時効がありません。
一方入管・警察に捕まるのではなく、自ら入管に出頭して早期帰国を申し出た場合には、一定の犯歴や送還歴等がないなど
の要件を満たせば、身柄を拘束されることなく出国命令手続という簡易な手続で帰国することができます。この手続により帰
国した者は、その後1年間入国を拒否されます。
第二は、まだ在留期限内にある場合です。この場合は、失踪はしていても我が国にいることそれ自体は適法です。次のよう
なケースが考えられます。
その一は、受入れ機関に黙って帰国してしまうケースです。一定の刑に処せられながら未執行であったり、一定の犯罪で逮
捕状が出ていたりなど、要するに関係機関から出国確認留保の手配がなされていれば別ですが、そうでなければ通常の出国者
と同じく出国することが可能です。この帰国が送出し機関・受入れ機関との間で締結された契約に抵触するのであれば、後日、
三者間で解決を図るほかありません。
その二は、在留期限内で研修・実習先ではない会社等で働いていたケースです。
在留資格「研修」を有する者は、そもそも報酬を受ける活動を禁止されていますし、在留資格「特定活動」を有する者は活
動内容と活動場所が個人ごとに指定されていますから、研修・実習先でない会社等で働いて報酬を受けることは「資格外活動」
と呼ばれる入管法違反です。不法残留した場合と同様に、行政処分である退去強制と刑事処分が適用されます。働いているう
ちに在留期限を経過すれば、上述の不法残留者としての取扱いを受けることになります。
不法残留中であれ、在留期限内であれ、違法な状態で働くことは、雇用主からは足下を見られて悪条件で使われ、違反の事
情を知っている者からはゆすられ、過酷な環境での生活を余儀なくされた挙げ句に惨めに帰国するのが通常です。惨めさから
逃れるため犯罪にまで身を染めざるを得なかった例も数多くあることを、研修生・技能実習生のみなさんも心に留めておいて
ください。
その三は、ほとんど例がないと思いますが、所在をくらましたものの何ら職に就かずにブラブラしているケースです。在留
期限が到来するまでは入管法違反には該当しませんが、3か月以上本来の活動に従事しないことが確認された場合には、在留
資格が取り消され、出国を促されることになります。
個人の利己的な失踪行動は、自分自身の経歴に傷がつくだけでなく、家族・友人・同僚・送出し機関・受入れ機関など多く
の関係者に心配や迷惑をかけることを肝に銘じてください。さらに、こうした愚かな行為が、研修生・技能実習生の受入れ事
業に水を差し、場合によっては、その後失踪者を出した受入れ企業においては研修生の受入れが困難になるなどの事態にもな
りかねないこともよく認識してください。